4月9日は 映画監督シドニー・ルメット氏の命日
2011年86歳で死去
名作『狼たちの午後』
うだるような暑さのブルックリンの午後。楽観的で無計画な二人の男が銀行を襲う。リーダーのソニーとパートナーであり、後に問題を引き起こすサル。取り囲む警官隊、熱狂する群衆、騒ぎ立てるマスコミ、そしてピザの配達人までもが、事態を限りなくエスカレートさせていく。
アメリカ合衆国の映画監督、演出家。ニューヨークを舞台に硬派な社会派映画作品を撮り続けた。リアリズムに徹した骨太な演出が特徴。
1957年に初の劇場映画『十二人の怒れる男』の監督を務める。ルメットはこの作品でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞、一躍人気監督の仲間入りを果たす。テレビ演出家から転じた映画監督としては草分け的存在であり、同時に非ハリウッド系の映画勢力であるニューヨーク派の旗手としての活躍が始まる。
1960年代のルメットは『夜への長い旅路』(1962年)や『質屋』(1964年)など、主に文芸作品の映画化で力を発揮した。『未知への飛行』(1964年)は冷戦時代に於ける核戦争の危機の本質を鋭く描いた作品である。1970年代には『セルピコ』(1973年)、『オリエント急行殺人事件』(1974年)、『狼たちの午後』(1975年)と次々に話題作を発表、名実共にアメリカ映画界を代表する巨匠となる。『ネットワーク』(1976年)ではゴールデングローブ賞 監督賞にも輝いた。
ルメットは1980年代も精力的に映画を製作するが、1990年代においてはやや精彩を欠いた。特に『グロリア』(1999年)は主演女優のシャロン・ストーンがゴールデンラズベリー賞にノミネートされるなど駄作の烙印を押され、ルメット自身も終わった監督だと見なされる。しかし、最後の作品となった『その土曜日、7時58分』(2007年)では往年の緊張感溢れる演出が復活、批評家たちからも傑作と評価されルメット健在を印象付けた。
ルメットはアカデミー監督賞に4度、英国アカデミー賞監督賞に3度、カンヌ国際映画祭パルム・ドールに4度ノミネートされたが、これらはいずれも受賞には至らなかった。しかし2005年にはその生涯における業績を評価され、アカデミー名誉賞を贈られた。
監督作品
左から製作年度、映画の邦題、原題の順に記述する。
- 1957年 『十二人の怒れる男』 – 12 Angry Man
- 1958年 『女優志願』 – Stage Struck
- 1959年 『私はそんな女』 – That Kind of Woman
- 1959年 『蛇皮の服を着た男』 – The Fugitive Kind
- 1962年 『橋からの眺め』 – A View from the Bridge
- 1962年 『夜への長い旅路』 – Long Day’s Journey into Night
- 1964年 『質屋』 – The Pawnbroker
- 1964年 『未知への飛行』 – Fail-Safe
- 1965年 『丘』 – The Hill
- 1966年 『グループ』 – The Group
- 1967年 『恐怖との遭遇』 – The Deadly Affair
- 1968年 『グッバイ・ヒーロー』 – Bye Bye Braverman
- 1968年 『The Sea Gull』(邦題不明)
- 1969年 『約束』 – The Appointment
- 1970年 『King: A Filmed Record… Montgomery to Memphis』(邦題不明)
- 1970年 『はるかなる南部』 – Last of the Mobile Hot Shots
- 1971年 『ショーン・コネリー/盗聴作戦』 – The Anderson Tapes
- 1972年 『Child’s Play』(邦題不明)
- 1972年 『怒りの刑事』 – The Offence
- 1973年 『セルピコ』 – Serpico
- 1974年 『Lovin’ Molly』(邦題不明)
- 1974年 『オリエント急行殺人事件』 – Murder on the Orient Express
- 1975年 『狼たちの午後』 – Dog Day Afternoon
- 1976年 『ネットワーク』 – Network
- 1977年 『エクウス』 – Equus
- 1978年 『ウィズ』 – The Wiz
- 1980年 『Just Tell Me What You Want』(邦題不明)
- 1981年 『プリンス・オブ・シティ』 – Prince of the City
- 1982年 『デストラップ・死の罠』 – Death Trap
- 1982年 『評決』 – The Verdict
- 1983年 『Daniel』(邦題不明)
- 1984年 『ガルボトーク/夢のつづきは夢…』 – Garbo Talks
- 1986年 『キングの報酬』 – Power
- 1986年 『モーニングアフター』 – The Morning After
- 1988年 『旅立ちの時』 – Running on Empty
- 1989年 『ファミリービジネス』 – Family Business
- 1990年 『Q&A』 – Q&A
- 1992年 『刑事エデン/追跡者』 – A Stranger among Us
- 1993年 『ギルティ/罪深き罪』 – Gulty as Sin
- 1997年 『NY検事局』 – Night Falls on Manhattan
- 1997年 『Critical Care』(邦題不明)
- 1999年 『グロリア』 – Gloria
- 2004年 『強制捜査』 – Strip Search
- 2006年 『コネクション マフィアたちの法廷』 – Find Me Guilty
- 2007年 『その土曜日、7時58分』 – Before the Devil Knows You’re Dead
受賞歴
アカデミー賞
受賞2005年アカデミー名誉賞ノミネート1958年アカデミー監督賞:『十二人の怒れる男』1976年 アカデミー監督賞:『狼たちの午後』1977年 アカデミー監督賞:『ネットワーク』1982年アカデミー脚色賞:『プリンス・オブ・シティ』1983年 アカデミー監督賞:『評決』
ゴールデングローブ賞
受賞1977年 監督賞:『ネットワーク』ノミネート1958年 監督賞:『十二人の怒れる男』1976年 監督賞:『狼たちの午後』1982年 監督賞:『プリンス・オブ・シティ』1983年 監督賞:『評決』1989年 監督賞:『旅立ちの時』
- ベルリン国際映画祭
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞
- 1982年度 監督賞 『評決』